2007-09-03

「Out of the Dust」


今日は、久しぶりの雨が降った。乾いた地面にしみ込んでいく水を見ていたら、数日前に読み終わった本のことが心に浮かんだ。

「Out of the Dust」Karen Hesse 著。ニューベリー賞受賞作。舞台は、1934年から35年にかけてのアメリカ、オクラホマ州。大恐慌の名残りに加え、史上まれに見る大干ばつに見舞われた農村地区に住むBilly Joeという多感な少女の13歳から14歳にかけての日々を綴ったもの。最初のページをめくって、まず驚いた。散文ではない。一ページ、一ページが独立した「詩」で構成されている。それでいて、ストーリーがあり、ひきこまれるように次から次へと、Billy Joeの気持ちに寄り添って読み進めてしまう。

それは、例えばこんな風に。

Tested by Dust

While we sat
taking our six-weeks test,
the wind rose
and the sand blew
right through the cracks in the schoolhouse wall,
right through the gaps around the window glass,
and by the time the tests were done,
each and every one of us
was coughing pretty good and we all
needed a bath,

I hope we get bonus points
for testing in a dust storm.

April 1934


Billy Joeとその家族、地域の人々を襲った干ばつと砂ぼこり、砂嵐の描写は、読んでいる私の目や耳や口までザラザラしてくるような感覚におそわれるほどリアル。それも、この詩のスタイルをとった文体に負うものが多いと思う。英語の小説は、時に日本語のそれよりも饒舌なものだと思い込んでいた私の偏見が、この本で、一掃された。短い文章の積み重ねが、繊細な感情表現を可能にしている。「こんな小説が、あるなんて!」という驚き。

内容は、干ばつと貧困の中で、農業を営む両親のもとに生まれ、ピアノを愛するBilly Joeに降り掛かるあまりに残酷な運命を中心にして、彼女の挫折とそこからの再生が描かれているのだが、自然に翻弄されつつも、オクラホマを離れず黙って池を作るBilly Joeの父をはじめ、つらい中でも淡々と日常を過ごしている周囲の人々にとても共感を持てた。おそらくそれは、今の私が農業に携わっているからだろう。以前の私だったら、「あらー、農業は、大変ねー」というような視点でしか読めなかったかもしれないが、まあ、それなりに自然と向き合う仕事をしていると、Billy Joeの父の気持ちにも寄り添える。

「終わらない嵐はない。日々是好日。」


あとがきによると、作者は、当時の新聞などをもとに、かなり綿密なリサーチのもとにこの小説を仕上げた様子。例えば、Billy Joe がある日登校すると、見知らぬ一家が、教室に居座っている。彼らは、仕事を求めて「西」へ向かう途中。あまりにきつい道中で、行き倒れ寸前だったのだ。一家は、なんと、しばらくこの教室で寝起きして、臨月だった母親は、そこで出産までする。これも、実際にあった出来事が組み入れられているのだ。ほんの70年前のアメリカでの話です。また、地域から歌の上手な男の子が抜擢されて、ラジオ出演した日。土地の人々みんなが小さなラジオに耳を傾けて彼の歌声に酔いしれる。この70年の間に、得たもの、失ったものをふと考えてしまう。

英語版は、YL5.6 約20,000語。(ただし、読みやすさの難易は、個人差がありそう。)
日本語版は、伊藤比呂美さんの翻訳。「ビリー•ジョーの大地」そちらも、ちょっと眺めてみたい。 




この本を紹介してくださったYさんに多謝。今のところ、今年読んだ洋書の中で間違いなくベスト1です。

夕ごはん

天ぷら(イカ、ハモ、サツマイモ、ピーマン、なす、にんじん)
ぬか漬け
アスパラ
トマト
もりそば

2 comments:

  1. こにゃにゃちわ、みかんです。
    原文、読めるもんなら、読んでみたいものです(涙)
    お話の雰囲気からして、テレンス・マリックの「天国の日々」を思い浮かべました。

    わたしの一番最初の英語挫折の記憶は、中一の4月、授業では「Yes,it is」を「イエス、イット、イ〜ズ」と習ったのに、ラジオの基礎英語のネイティブの話す「Yes,it is」を聞くと「イエス、リッリース」にしか聞こえない。当然、ラジオの発音の方があっているのだが、そんなこともわからない田舎者の私は、自分の耳がおかしいのだと、ずっと思っていた。それがつまづきの第一歩。そんなこんなで、結局、英語はわからないまま、ついはずみで、アメリカに遊びに行くという無謀なことをしたら、意外と通じたので、大人になって面白くなった、というのが私の英会話勉強のはじまりはじまり〜です。でも、未だに超低レベルです。
    わたしみたいな「おばか」を一人でも多く救ってあげてください。

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  2. みかん様

    「おばか」なのは、みかんさんじゃなくって、、、、、日本の「英語教育」です。

    Out of the Dust は、みかんさんのような本好きの人が、多読方式で、ちょっと取り組んでみたら、絶対(これ、太文字でお願い!)読めるようになりますっ!

    以前にもちょっとお伝えしましたが、みかんさんの地域では、多読に取り組んでいる人が多いんです。近々、ブッククラブをご紹介します。

    多読方式は、、、、みかんさんには、絶対オススメの方法。会話の方にもいい影響が生まれますよ。

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