2008-10-14

ここではない何処か

久しぶりに読書の報告を、、、、この本、先月の今頃読んでたんですが、なかなかヘビーだったので、うまく言葉にできないまま、今日に至る、で、あります。そろそろ内容忘れそうなんで,書いときます。ずいぶん前に知人に奨められて購入していたまま、読むチャンスがなかったこの本のタイトルはAnywhere but here(ここではない何処か)(Mona Simpson著)3センチの厚みで、細かい字の大きめのペーパーバックでした。

タイトルそのものに「ここではない何処か」を求め続けた女性とその娘の関係を軸に、人間の魅力や危うさってなんだろう?という事を考えさせるお話。娘の視点が中心に描かれています。だから、主人公は最後に「自らの言葉」で自らの人生を語るアデルなのだけど、アデルについて、娘のアンや、母親、姉が語る。しかも、彼女たちは,自分たちの人生も語りつつ、、、というややフクザツな構成。ただ、その構成がストーリーに重厚さを与えていると思いました。

ストーリーは、アデルとアンの母子が、アデルの2番目の夫のクレジトカードを盗んで、ウイスコンシンからカリフォルニアへ車で逃避行をする場面から、始まる。ふたりは、アンが「ハリウッドの子役スター」になるために、ウイスコンシンを離れたのでした。このロードムービーっぽいシーンから以降、カリフォルニアで生活を始めてからも、ふたりは、常に、車で町をウロウロし続ける。借りたアパートには家具はなく、食事も全て外食。それでいてファッションと化粧品には糸目はつけない。経済的にはどんどん困窮して、破産寸前。それでも、「地に足が着いた生活」をしたら「負け組」といわんばかり。「理想の家、理想の生活」が手にはいるまでは、あきらめない。かといって、地道に働くというのも「負け組」のやること。アデルが目指すのは、「玉の輿」。。。。「私は、貴女のために全てを犠牲にしているのよ」と平気で口にするアデル。ほとんど人格破綻している母アデルを冷静に見つめる娘だけれど、母の引力からは逃れられない。「ここでは、ない何処か」は、見つかるのでしょうか?

このアデルの生活と対比するような形で、アデルの母と姉のウイスコンシンでの堅実な生活も描かれる。それも本人たちが語るという形で。彼女たちは、まさに「ここしかないよ!ここ!」の生活。母リリアンは、いつも台所でパイやクッキーを焼いているような女性。姉のキャロルも平々凡々な主婦。それでもストーリーが進むにつれ、平凡に見えたキャロルの人生も、決して平坦ではなかったことが明らかになったりして。

アメリカ版桐野夏生か?と、やや斬り口は違うのだけど、なんともぞっとする心理描写があり、また、現代アメリカならではの「根なし草的生き方(=アメリカンドリームを追いかける人生)」が描かれていて、なかなかヘビーな一冊でした。どうやらアンは、1960年頃に生まれた設定のようで、当時のテレビ番組やら、チェーン店の名前やらがたくさん出てくる。その「記号」の意味がもっとよくわかったら、さらに「怖い」お話なのかもなあ。読みながら、アデルに対して嫌悪感を感じつつも、ひきこまれるのは、なぜ?哀しい女性です。

ちょうど、この本を読んでいる時、上京中。小学生らしき女の子がきれいに着飾った母親に手をひっぱられて歩きながら、ケータイで誰かと話しているのを目撃しました。本屋さんの中ですよ。この本の主人公とイメージが重なりました。

映画化されたみたいですね。

Anywhere but Here
Anywhere but HereMona Simpson

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夕ごはん
麻婆豆腐
カボチャ
人参の漬け物
納豆
しめじとわかめのみそ汁

よく考えたら、、、、数日前も麻婆豆腐でした(-_-)

5 comments:

  1. 映画は、『ここよりどこかで』って邦題でDVDが出ているようです。
    http://www.amazon.co.jp/ここよりどこかで-ウェイン・ワン/dp/B00008ILKO
    今度、みてみようかな。お話聞いて、以前読んだ『わたしには家がない』のホームレス少女ローラリーを思い出しました。やはり、ホームレスの母に振り回されるってお話でしたが、こちらは、実話です。どちらも、娘に対する愛情はあるものの、社会性のない母親像が描かれているようですが、愛情があるだけかわいいもんです。わたしは、最近『世の中には、生まれもって愛情の薄いひと、もしくは、他者に対する愛情のない人っているんだなあ」と思ってるんで、桐野さんの小説は嫌いだけど、彼女は人間のそういう部分を描いて、人間探求しているのかな?って感じてます。

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  2. 麻婆豆腐、材料が少なくて、安く上がって、ボリュームがあって、さらに、素早く作れる「お助けメニュー」ですよね。「ああ、もう、今日ご飯作りたくない!」って思った時、麻婆豆腐なら、作ろうかって気になります。以前、かずさんにもらった韓国南蛮が気に入って、地元のお店でそれらしきものを買って、冷や奴や麻婆豆腐のみならず、何でもふりかけて使ってます。おいしいのよね。

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  3. >みかん様

    その映画だと思います。わたしも見てみたいなあ。この物語の「母」の強烈さは、「他者に対する愛情が薄い」のかもしれないと思わされます。つまり「貴女のためよ」と娘には、逃げ道を塞いでおきながら、実は、「自分のため」にだけ行動している感じの「恐ろしさ」です。

    麻婆豆腐。文句が出ないから、いいのだ!つーか、数日前と同じだったと気づいているか?同居人?(笑)

    おりひめ

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  4. それにしても、最近、そういう、パラノイア的性格(私は勝手にそう呼んでいる)の人って多いよねえ〜。なぜ、そうなるのかなあ?と、様子みて、考えてみるに、やはり、何か弱い部分があるんだよねえ。それを隠すためや、弱い自分を守るための、必死の行動が「強烈な人格」になってあらわれたりするもんだから、根が深い。結局、あるがままを受け入れるしかないのですが、それが、精神的苦痛を伴うから、なかなか、簡単にはいかないんですよねえ。

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  5. >みかん様


    「弱い自分を隠すため」ってその通りかもしれませんね。。。そういう人の中にある「観音様」を見なさいってことが瀬戸内寂聴さんの「仏教入門」にありました。(図書館で借りました。とってもよかったです!ありがと〜。)

    なかなか、難しいですよね。


    おりひめ

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