花の収穫は続き、合間に大人の方とのレッスン、多読本の貸し出しの方とお会いし、ええっと、ハウスの草取りもしてましたが、しっかり図書館で「干し野菜の本」を探しもしてました。おっと、目の前にあった直木賞受賞作も借りてきましたよ。
「小さいおうち」(中島京子著 文藝春秋社 2010)
舞台は、昭和10年から20年ごろの東京山の手が中心。(今の成城あたりのようだから、厳密には山の手では、ないですね。言ってみたら「山の手チック」な生活か。)かつて、「女中奉公」をしていた「赤い屋根の洋館」での生活について、主人公のタキさんの回想録の体裁です。
ストーリーの軸は、タキさんが仕えていた平井家の奥様の秘めたロマンスをタキさんが綴るという形ですが、決して「家政婦は見た!]ではないのです。
この小説の魅力は、綿密なリサーチ(のたまものだろう)で再現される当時の「中流階級」の生活の細部。当時、はやっていた髪形から、人気のレストラン、お菓子屋さん、話題の映画、音楽会、お受験など、レトロ感覚ではなく、とても身近に感じられる「フツーの生活」。戦争の「影」ではなくて、逆になんだか「高揚している」世の中のムードはバブル時代のどこかの国を彷彿させ、「あるある」感がたっぷりです。
それほど、「フツー」に「銃後」があったってこと。これは、怖い。
戦局の悪化で、故郷に「いとまごい」となるタキさんだけど、それ以降の生活の描写がなんとなくぼんやりしているのは、人は哀しい記憶より楽しかった記憶をより積極的に覚えていたい意思の表れでもあるような。つらい記憶は、ほおっておくと増殖してくるからね。
文章全体が落ち着いていてきれい。映像がくっきり浮かびます。高野文子さんの漫画と重なるリズムとトーン。
それにしても、タキさんが言うように、「女中」という職業は、そんじょそこらのキャリアウーマンにはまねできない「ある種の頭のよさ」と「気配り」「手際のよさ」「リーダーシップ」が必要。タキさんの動きや家事の様子を読むだけでもいい気持ちになります。この文化が失われたことは戦争の害悪のひとつかもね。
と、雨降りを言い訳に読書にふけるダメ主婦は感慨にふけったのでした。
著者は私と同年生まれ。古いテーマをモチーフにした、新しい形の「反戦小説」。
小さいおうち | |
中島 京子 文藝春秋 2010-05 売り上げランキング : 248 おすすめ平均 読み手次第で価値の変わる作品 おうちの中にいるちいさい家族のお話。 昭和の恋のお話し Amazonで詳しく見る by G-Tools |
夕ごはん
野菜のてんぷら
キューちゃん漬け
トマトサラダ
おりひめさん、こんにちは。
ReplyDelete先月、オデュッセウス読書会の人たちに、手持ちの絵本と児童書を紹介しました。クローディアの秘密の原作やRoald Dahl本、Margaret Wise Brownものなど10冊ほど。今月は先週水曜日が集まりだったのですが、みなさん開口一番「すっごくよかった!」「こんな楽しい世界があるのねえ」って。1ヶ月の間に回し読みしてくださったそうなのです。これすべて、おりひめさんのお陰です。感謝。
オデッセイが「英雄譚」だとやっと分ってきました。面白いです。
吉田さま
ReplyDeleteオデュッセウス読書会の皆様だからこそ、英語の児童書の魅力にひかれるのかも。 Louis Sacherの ”The Hole"、お貸ししましたっけ?あれも絶対お勧めです。
おりひめさま、
ReplyDeleteオホーツク36度超えにもめげず、カラーはハウスに整然と並び、興味深い書評の3連打、あなたはすごすぎます。
"Holes"、このブログでの紹介文が忘れられず、図書館から借りて読みました!とてもとてもよかったです。Camp Green Lakeに着いてからの怖さ、忘れられません。コミカルなMarvin Redpostシリーズが同じ作者のものだとはちょっと信じられませんでした。
(読みたい一冊)「ナニカアル」、出版直後、桐野さんと寂聴さんの対談が婦人公論に出たの。寂聴さんの言葉の端々に桐野さんへの作家としてのライバル意識がくっきり。ゆったりかまえた寂聴さんじゃない面がでてて、異色のバトルでした。
吉田さま
ReplyDelete瀬戸内寂静さんの「闘争心」に火がついちゃったんですねー。なんとなくわかるような。「女の情念」第一人者としては、心穏やかではいられないんでしょうか?
「小さいおうち」もおススメです♪昭和元年ごろにお生まれで東京育ちの方には懐かしいだろうアイテムがてんこ盛りだと思います。お身内にあてはまる方がいらっしゃったら、ぜひ。