2009-08-14

悪も身のうち

北海道新聞の朝刊で、五木寛之が「親鸞」という小説を連載している。これが、オモシロイ。やや荒唐無稽でアクションシーンなども頻繁に出て来たり、美女も出てくるエンターテイメントでありつつ親鸞の思想がよくわかる。(このエンタメ系というのも実は親鸞の思想に沿っているのかも。)親鸞といえば、「悪人正機」。「善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人をや。」ですよね。って、頭に残っているのはこのフレーズだけ。その先の深いところは、全く知らなかったのだけど、この小説を読んで、ぶっとんだ。

この小説では、「黒面法師」という「絶対悪」が登場して、自分は「悪」であることで「善」を証明するのだ、などといって親鸞に挑戦す
る。親鸞がこの「二項対立」にどう対応するか、、、は、この先のお楽しみなのだけど、どうやら彼の立場は、「自分の身のうちにある悪を見つめる」のようだ。つまり対立させない、という選択。これは、リアル。

先週あたり騒がれた「清純派」と言われていた女優の逃避行が思い浮かぶ。騒動の一時期、彼女が警察の追求をかわすために「逃亡中」と報道された。

告白すると、そのとき「このまま逃げ続けたら、スゴイ!」って思った。まるで桐野夏生の"OUT"ではないか?と。ドンキで下着を買い込み、公衆電話から子どもに電話。そして、このまま密航船で、アジアのどこかに行って行方不明、、、もしかしたら麻薬王の庇護で生き延びる、、、なーんてなったら、善悪の彼岸の先にまで突き抜ける「確信犯」ではないか?と。

桐野本は、家に置いたら「悪霊」が寄ってきそうな禍々しさがある。それでも"OUT"や"メタボラ”には、悪の先にある光のようなものが感じられる引力がある。つまり、読む側の「身のうちにある悪」を照らしているからだと思う。

さて、女優の逃避行の現実は、桐野夏生の小説ほど「奇」では、なかったようだが、彼女の昔のヒット曲がまた人気というあたり、やはり「身のうちの悪」に、人の心が引っ張られるんだろうな。

「親鸞」からとんでもない話になっちゃいました。だけど当たらずとも遠からず、、では?

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夕ごはん

乾物のオイスター煮込み
ブロッコリ
きぬさやとウインナの炒め物
ぬか漬け(きゅうり、にんじん、ブロッコリの茎)
納豆
舞茸、しめじ、わかめのみそしる

7 comments:

  1. 五木寛之の「親鸞」読んでみたいわ〜。そういえば、五木さんの小説って、久しぶりだね。ずっと、随筆ばかりだしてたから。実際に親鸞の時代は、日本版宗教改革の時代で、そうとうに思想も世相も混乱してたから、「黒面法師」なんて人もいただろうね。親鸞の教えを都合よく解釈して、悪いことすればするほど、浄土にいけるって言って庶民をたぶらかしていた法師もいたらしいし。
    善も悪も、己の身のうちにあるもの。その強烈なパラドックスが宗教の根本のような気がします。

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  2. こんばんは

    朝刊は、読むまもなく家を飛び出る日々です。
    単行本を待ってます、待ってます、待ってます、、、、、

    某女優の話は、、、新幹線の中、テロップが流れ続け、その後の展開は、なんだかなあ。

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  3. 2日ほど前に知人から「五木寛之の『風の王国』が山をやる人にはおもしろいよ」という情報を得たばかりだったので、ほほうと思いました。

    中学ぐらいの時に「青春の門」を読んで違和感を感じたきりだったけど、「四季なんたら子」とかの時点で私の人じゃないと思ってたけど、五木寛之,見直し時ということなのかしら。

    四季なんたら子といえば、人々の書名、作家名の思い違いというのが素朴におもしろいです。
    http://www.library.pref.fukui.jp/reference/mosikasite.html

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  4. >みかんさま

    「親鸞」今月末で終了みたい。ってことは、きっと大幅加筆で単行本になるってことだと思うよ。お楽しみに〜。

    >かずさま

    お忙しい毎日、朝ご飯は食べてね♪

    >山女さま

    私も「四季なんたら子」とか「愛の水中花」って、別世界でした。「昭和の湿気」がベタベタで。なんというか「山師」っぽいし。で、その理由が、五木氏の生い立ちにあるみたい。太平洋戦争終結時、今の北朝鮮に残留していて、そのときの体験談は、すさまじいです。一読の価値あり。「身のうちの悪」をずっと背負っていたんだなあと。

    いわゆる「芸能(物語も含む)」って光と闇、一緒くた。だから魅力あるんだろうと。ドロドロあって当たり前。そこを五木さんは、「自分の中にある毒」として表に出しているし、「うさんんくさい山師」を隠していない。だから潔い。その点、今ベストセラーの「1Q84」の作者は、なんとなーく、うさんくさいのよね。「毒のかたまり」だろうに、その「うさんくささ。潔くないところ。」が魅力なのか?

    おっと。「親鸞」は、ちょっと別次元の物語になっています。

    おりひめ

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  5. わたしも「五木寛之」といったら、「四季なんたら子」のイメージで当時はぜんぜん興味なかったのですが、その後「うらやましい死に方」っていう本を読んで、見方が全くかわり、その後上梓される五木さんの随筆をよく読むようになりました。だから、彼の小説って読んだことがないのです。たぶん、この先も、以前の作品は読まないような気がする。親鸞が出版されるのが楽しみです。

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  6. 親鸞ですが、12月に発売予定だそうです。上下巻で定価3150円だそう。たか〜!
    http://www.chunichi.co.jp/article/release/CK2009082102000046.html

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  7. >みかん様

    なにーっ!上下巻で、3150円!!

    さすが「山師」!エンタメ系のぼったくり帝王、ハリポタ並みじゃん!

    と、早合点したら、、、「上下巻合計で3150円」ですね。それなら一冊1500円ちょっとか。

    これなら大往生できるでしょう。おすすめ。

    おりひめ

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