2011-12-30

「いのちと環境ー人類は生き残れるか」

今日の午前中までで、冬休み特別レッスン前半戦終了~。中学生の補習、英検補習などのほかに小学生には、アルゴカードで遊びまくる「アルゴくらぶ」や絵本を読みまくる(私が、、ですが)「プチ多読くらぶ」など、ちょっといつもと違うレッスンができるのが長期休みのいいところ。みんな、いつもよりのびのびリラックスしてるのは、やっぱり学校終わったあとのレッスンは、お疲れなのかなあ。

「プチ多読くらぶ」では、おうちにあったディズニーの「人体のフシギ」みたいな本を持参してきた子も。。。。でもねー、これ、ほとんど理科の教科書。解剖学みたい。違いは、ところどころ、脈略なくディズニーキャラが現れて解説をしている点でしょうか。それでも、皮膚の仕組みなど、かいつまんで(もちろん日本語で)説明したら、「へー!そうなの~?」と、興味津々。それもそうだし、ほら、こういうもの(内臓だの、筋肉だの、脂肪だの)が、AちゃんやBちゃんのからだの中にはいってるって、フシギじゃない?しかも、それって、ここにかいてあるDNAとかRNAとかでできてるのよー!には、「スゴイ!スゴイ!」といい反応。(いえ、後半のDNA,RNAあたりは耳にはいっていないようだったが、、、)

こういう「生命のフシギ」「自然のオドロキ」みたいな部分を、ずっしりつかめるのは、若い感性だからだと思う。世界の「フシギ」にたくさん出会ってほしいものです。センス・オブ・ワンダーですね。

今年は、3月の大地震、大津波、それに加えての原発事故など、発想の転換を強いられるできごとがありました。それを受けて、「エネルギー問題」や「原発行政・原発利権」、「放射能被曝」などに関しての書籍もたーくさん出版されました。巷の「どうしたらいいの?」「何が起きているの?」の不安にある意味便乗しているような内容のものも数知れず。そんな中、静かに問題の本質を問うた一冊があります。

「いのちと環境」(柳澤桂子著 ちくまプリマー新書 2011)が、それ。著者は、チェルノブイリ事故の直後から「放射能の危険性を伝えなかった科学者の責任」から、原発の問題についての本(「いのちと放射能」ちくま文庫)も出版してきた方。ただ、8月に出版された本書は、原発や放射能の話題も織り込んでいるものの、他の類書とは一風違う形で問題に斬りこんででいます。

まず、著者は言います。

現在地上に生きているものは、原核生物もミジンコも、肺のある魚も、カエルもイモリもネズミもサルも、絶滅の危機を乗り越えて四十億年のあいだDNAを受け継いできたいのちです。無から生じた生物はいません。四十億年前に生命が誕生した奇跡のあとは、すべての生物は生物から生まれ、いまにいたっているのです。地球上に生きている生物はみんな四十億年のいのちをもっています。(pp25)


わたしたちがこの場にいるということは、40億年かけてつながってきた地球の生命の歴史からみてもかなり奇跡的なできごとである。そこを忘れてはいけない、という点から話が始まる。かなり壮大でしょう?あまりに壮大すぎて、「目先の放射能をなんとかしろ!」や「国が、東電が補償しろ!」の路線の皆さんにとっては唐突すぎるかもしれません。

だけど、こういうときだからこそ、壮大ともいえる大きな視点が必要なんだと思うのですが。

センス・オブ・ワンダーの視点。

本書では、この「四十億年の奇跡」が、文系アタマの私にもわかるようにやさしく解説されたあとに、現在の「原子力発電」への依存が始まった環境的背景が、人間と環境、エネルギーの歴史を通して「見える」ように説明されています。これを読むと、今の状況はある意味「人間という種による歴史の必然」だったのかなあとも思え、もう戻れないのかと悲観的にもなります。

そんな悲観的な現状を乗り越える方法として、著者は人間が「意識の進化」を果たして「自我を超越した存在」になる必要があるだろう、そして、今までの進化の歴史を考察しつつ、著者自らが、原因不明の病で絶望の淵にいたときに実際に体験した「神秘体験」から、そちらの方向にいくことは可能だろうと結論づけています。

世界のどの宗教も、表現はちがっても自我を超越することがたいせつだと教えています。(中略)よく考えてください。この宇宙を満たしているものは分子であって、あなたも分子の塊にすぎません。(中略)世界は分子の濃淡があるだけど、一元的なのです。この思考を体得すれば、あなたはほんとうに幸せになるのです。すべての宗教が教えていることはこのことです。(pp209)


そうはいっても、そんなことができるのか?と、凡夫としてはため息ですが、それでも著者は、はげましてくれます。

まだ、今すぐみなさんにできることがあります。まず自分の意識レベルを上げるような勉強をしてください。いい芸術に触れることをお勧めします。得に優れた文学を読みよく考えて下さい。あなたの周囲の人の意識レベルを上げるような会話をしてください。(pp.212)



ちくまプリマー新書は高校生向きの新書。内容的には、今、世の中で話題になっていることの基礎知識にもなることばかりです。
若い人ばかりでなく、どんな年齢の人にも手にとってもらいたいこの本の紹介で、今年の「たねまき日記」は店じまい(^^)。

毎回、読んでくださってありがとうございます。来年もどうぞよろしくお願いします。 

いのちと環境: 人類は生き残れるか (ちくまプリマー新書)
いのちと環境: 人類は生き残れるか (ちくまプリマー新書)柳澤 桂子

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夕ごはん

刺身盛り合わせ(サーモン、ホッキ貝、ホタテ、イカ、マグロ)
冷奴
ほうれんそうのおひたし
カリフラワーとゆで卵のサラダ
納豆
水菜とキャベツのみそしる

5 comments:

  1. 今年最後の記事、すばらしい本を紹介してくださって、ありがとう。原子力、放射能については、いったい誰を、どこを信じたらいいのかわからなくて。これなら私でも理解できそう。来年もよろしく!

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  2. 世界は一元的な分子の濃淡。
    面白いですねえー。
    般若心経の「色即是空空即是色」にも通じるような。
    科学も突き詰めれば宗教や哲学みたい。
    真理は一つ、という事なのか。

    2012年も、いろいろなお話聞かせてくださいませ。

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  3. >Mrs. Malone_emmieさま コメントありがとうございます。「いのちと環境」、もしお読みになったらまたどこかで感想知らせてくださいね♪ブログの方も楽しみにしております。こちらこそ、よろしくお願いいたします。

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  4. >しのはら様 「般若心経」といえば、柳澤先生には、「生きて死ぬ智慧」という般若心経の現代語訳本もあります。http://goo.gl/1bsux結局、そこにいくのかな?今年もよろしく~!

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  5. おりひめさま
    明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。
    って、去年の記事ですが、まずはご挨拶。
    さすが、おりひめさん、素晴らしい書評!うちのブログにもまるごと転載させてください。よろしくお願いします!!とりあえず、今から載っけちゃうから、だめよ!ってときは、連絡ください。よろしくです。ほにゃらば〜。

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