得した気分。夫も気分転換したみたい。
で、読み終った本はPrisoner of Tehran:a Momoir.著者は、私と同年代(65年生まれ)のカナダ在住の女性。イラン出身。ホメイニ時代のイスラム革命の最中、16歳の時に政治犯が送り込まれる「恐怖の収容所」に投獄され、2年間を過ごした。そのときの体験が核となっている「自伝」です。私がダラダラと高校通っている間に、とんでもないことが世界のあちこちで起きていたのだ。そして、私がのんびり餃子を作っている今も。
マリーナの祖母はロシア革命でイランに亡命したクリスチャン。マリーナ自身ももクリスチャンというイスラム世界ではマイノリティである。初恋の相手は、シャーの独裁政治に反対のデモに参加したことで射殺される。そしてシャーが亡命してホメイニ時代が来ると、マリーナ自身が「反抗分子」として投獄される。そして処刑寸前のところで、彼女に一目惚れをした収容所の要人アリに命を救われ、「従わなければ家族に危害を加える」と脅され、その男と結婚。イスラム教への改宗を強要される。投獄中は、同じへやの少女たちが処刑され、拷問を受け、精神を病んでいく様をつぶさに目撃したマリーナは、「自分が生きて、何かを遺さなければ彼女たちの存在は『無』になる」と自分に言い聞かせることで、自殺を思いとどまる。そして、マリーナにとっては、憎しみしか感じられない圧政者の象徴のアリ自身が、シャーの時代には「政治犯」として同じ収容所で3年を過ごした事を知るのだった。
そのあと、さらに紆余曲折があって、マリーナはカナダに移り、夫(アリとは別人)とこどもに恵まれた生活を送る。封印したい過去をあえて晒すのは、「語る事で、『自由』になるため」であり、いまだに続くイランの政治犯収容所での悪行を訴え続けるため。死んでいった仲間たちへの鎮魂歌なのだろう。
「革命前」の平和な子ども時代と、収容所での生活を交互に織り込んでいて、自伝というよりノンフイクションと私小説の間のようなふしぎなリズムが全編を覆っている。何よりマリーナがとても冷静に状況と自分自身を見つめていて、哀しみさえも押さえた筆致なので逆にひきこまれる。想像を絶するような状況を乗り越えられたのはマリーナの「信仰心」だと思うが、そうなってくると、こんな状況に追い込まれたらわたしはどうするんだろう?へろへろだろうなあと、餃子を包みながら思ったのでした。
英文はとっても平易です。5月ごろペーパーバックも出るみたい。おそらく日本語訳もすぐ出るでしょう。オススメです。
Prisoner of Tehran: A Memoir | |
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夕ごはん
焼き餃子
長いもサラダ
納豆
さつまいもとあげのみそしる
ほんとに平易ですか?(おどおど)
ReplyDeleteわたしでも読めますか?(おどおど)
英語力超ド級低レベルです。(ハリーポッターも挫折)
この本は、表紙のデザインがきれいですよね。
以前ご紹介の「ダスト」でしたっけ?全編詩で書いてあるっていってた本。こういう本を選ぶおりひめさんは、センス抜群ですね。
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ReplyDeleteつながっちゃった。。。。
ReplyDelete先月「Persepolis(邦題:ペルセポリス)」という映画を見ました。
アニメですが、大人向け。
「「革命前」の平和な子ども時代と、収容所での生活を交互に織り込んでいて、自伝というよりノンフイクションと私小説の間のような」
がかなりイメージ重なります。
ペルセポリスの作者は収容所は経験していないけれど、その辺の人々と関わりがある。
結局彼女もイランを去らざるを得ないのです。
(原作、かなりおもしろそうです)
そしておととい「Children of Heaven(邦題:運動靴と赤い金魚)」という映画を見ました。
こちらは革命後のイランで暮らす貧しい幼い兄妹の話。
彼らには歴史の流れや政治は見えないのだけれど、ペルセポリスで語られていた教育の変化後の部分が垣間みられます。
どちらも「まだまだ知らないことがたくさんある」と思わされたの。
この本もそうだね。
自分が最近イランづいてるなと思ってたのでびっくりした。
みかん様
ReplyDeleteいつもコメントありがとう。
>わたしでも読めますか?(おどおど)
「はい!」と言いたいけど、みかんさんの英語の力についてよくわからないからなあ。(英語力の自己申告レベルは、だいたい、あてにならない。)ハリポタよりずっと、ずっと、ずっと簡単です。著者にとって英語が母国語じゃあないからでしょう。ジュンク堂に置いてあると思うから、覚えていたら洋書コーナーでチェックしてみてね。
Out of Dust もこの本も、「面白いよ」とすすめてくれる方がいるから出会えました.わたしのセンス?おほほ。
おりひめ
山女さま
ReplyDeleteこちらもコメントありがとうございます。つながりましたか?著者のインタビューがYou Tubeでアップされてますよ。Persepolisは、Prisoner of Tehran の日本語訳を探しているときによく見かけました。機会があったら見たいです。もしかしたら「ノンフィクションと私小説の間」の雰囲気ってイラン辺りの文化の「香り」なのかもしれませんね。(当てずっぽう)
Children of Heavenの映画は見ました。(原作ダイジェストの英語本も読んだ)イラン映画は、一時期日本でブームでしたね。独得の語り口がありますよね。人々の顔だちも「誰かさん」系だし(笑)
おりひめ
読みたいが、、、「課題図書」の山なんですよ・・・
ReplyDeleteペーパーバックになったら、探してみようかなぁ。あらかじめ、ストーリーを知ってると、けっこう読みやすいんですよね、”もの”によっては。たとえば、映画見てからのノベライズ、ブルース・ウィリスとお化けがみえる子どもの本(タイタル忘れた)。内容は、映画のまんま。あたりまえだが。
「ジュラシック・パーク」はスピルバーグの映画を見てるようで面白かった。そのうちほんとに映画化された。
「アルジャーノンに花束を」は、最初、読むのにとても苦労したが(スペルや全部大文字)のちにもっと大変(ラテン語、学術後)だったが、ストーリイがよかった。
時間があった、昔のはなし。今は、無理っぽい。結局は、興味がある分野で、内容がしっかりしていれば、おもしろいと思いました。高い授業料でした。残骸が山積みですが(苦笑)
かず様
ReplyDeletePrisoner of Tehranは、ほんとうに読みやすいです。そんなに長くないし、余計な描写が少ないです。もし、機会があったら、読んでみてね。たしかに、ストーリーの力で「読ませる」という要素は、外国語の本を読むときに必要ですね。おりひめ