「ぐるりのこと」を読みながら思ったのは、正直、「上手な文章」とか「キレ味のいい論客」というのでは、ない。まどろっこしかったりもする。ただ、なんとなくざらざらとひっかかるものがあって、それが逆にリアルだったりする。とりあげられている話題も、9.11のテロから、頻発する悪質な少年事件など、痛ましい世の中のできごとをどう咀嚼したらいいのかの、とまどいがそのまま描かれている感じ。、桓武天皇の妃の話から、トルコ旅行、英国セブンシスターズの断崖から、自身のもつ山小屋の境界をめぐるいざこざなど、まさに自分の「ぐるり」が点描されている。とりとめがないようなのだけど、魅力的なのは、彼女の「一人称」が伝わってくるからだと思う。
そういう文章は、強い。
著者は、ぐるりに視線を漂わせる事で、「あれ?」と感じた違和感のもとへ、自らの思考をめぐらせる。ヘジャブに身を包んでいるイスラム女性も、「抑圧」の象徴と見るか、「武器」と見るかで、視野はずいぶん変わる。「聖人君子」の象徴のような「西郷隆盛」だって、よく実像を調べると「排他的で、身内意識のかたまり」だったりする。
世界は、アメリカ的な、勧善懲悪ではおさまらない。ひとりの人間の中にさえ、「群れ」へのノスタルジーと「個」への渇望が混沌としているのだから。では、「私」はどうしよう?わからなくても、考えていこう。それが「ぐるりのこと」でした。
ぐるりのこと (新潮文庫 な 37-8) | |
梨木 香歩 おすすめ平均 題名が素敵 前作よりも抽象的だが、世界への真剣味を感じる ファン以外には無理 深く考えること 上書きされていく自分 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
夕ごはん
蒸しれんこん団子
ながいもサラダ
納豆
にらときゃべつのみそしる
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