2008-04-08

「ぐるりのこと」

くしゃみ、鼻水、はなづまりは、よくなってきたけど、どうも、まだ頭がボーッとしています。微熱もそのまま。たまった仕事は、さらにたまる。うーん、、気分転換に、数週間前、ちょっと思いついて読み始め、あっという間に数冊読んだ梨木香歩さんの「ぐるりのこと」というエッセイ集について。この人は「裏庭」「西の魔女が死んだ」「からくりからくさ」「りかさん」など、どちらかというとファンタジーを書く人。1959年生まれ。イギリスに留学してそこで児童文学者の家に寄宿していたそうで、作風からは、いろんな児童文学作品、ファンタジー、そして日本の少女まんが(大島弓子あたり)の雰囲気が漂っています。

「ぐるりのこと」を読みながら思ったのは、正直、「上手な文章」とか「キレ味のいい論客」というのでは、ない。まどろっこしかったりもする。ただ、なんとなくざらざらとひっかかるものがあって、それが逆にリアルだったりする。とりあげられている話題も、9.11のテロから、頻発する悪質な少年事件など、痛ましい世の中のできごとをどう咀嚼したらいいのかの、とまどいがそのまま描かれている感じ。、桓武天皇の妃の話から、トルコ旅行、英国セブンシスターズの断崖から、自身のもつ山小屋の境界をめぐるいざこざなど、まさに自分の「ぐるり」が点描されている。とりとめがないようなのだけど、魅力的なのは、彼女の「一人称」が伝わってくるからだと思う。

そういう文章は、強い。

著者は、ぐるりに視線を漂わせる事で、「あれ?」と感じた違和感のもとへ、自らの思考をめぐらせる。ヘジャブに身を包んでいるイスラム女性も、「抑圧」の象徴と見るか、「武器」と見るかで、視野はずいぶん変わる。「聖人君子」の象徴のような「西郷隆盛」だって、よく実像を調べると「排他的で、身内意識のかたまり」だったりする。

世界は、アメリカ的な、勧善懲悪ではおさまらない。ひとりの人間の中にさえ、「群れ」へのノスタルジーと「個」への渇望が混沌としているのだから。では、「私」はどうしよう?わからなくても、考えていこう。それが「ぐるりのこと」でした。

ぐるりのこと (新潮文庫 な 37-8)
ぐるりのこと (新潮文庫 な 37-8)梨木 香歩

おすすめ平均
stars題名が素敵
stars前作よりも抽象的だが、世界への真剣味を感じる
starsファン以外には無理
stars深く考えること
stars上書きされていく自分

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夕ごはん

蒸しれんこん団子
ながいもサラダ
納豆
にらときゃべつのみそしる

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