2008-07-12

アメリカの後追いは、お手のもの。

西日本、東日本の皆さん、暑かった一日のようですね。お体大切にお過ごしくださいね。こちらは、、、最高気温20℃くらいでした、(申し訳ない気分、、、)それで花の方もちょっと一段落。早めに作業を開始できたので,すこし人心地がついてます。このスキに、、、先月読んだ本の感想文を書いときますね。

10年ほど前のこと。東京の実家近くのおしゃれな繁華街を、フィリピンからのお客さんを案内していた。GAP,ベネトン、マクドナルドなどなどが並ぶ町並みをみて「これって、アメリカと変わんないなあ」と思っていたら、そのお客さんは「マニラと同じですね〜」ですって。世界中がその頃、こうして同じような町並みに変わっていったのでしょう。その時のことを思い出させたのが、「下流同盟〜格差社会とファスト風土」(三浦展 編著 朝日選書 2006)

「ファスト風土」とは、筆者の造語で、大型店の出店規制が緩和されたことにより日本中の地方の郊外農村部のロードサイドに大型商業施設が急増して、どこに行っても同じような店が並ぶ「ファスト風土」となっちゃったこと。24時間営業、自動車依存、消費優先の価値観などによるエネルギーの大量消費ももたらしている。アメリカのウオールマートという大型ホームセンターが、地域経済を飲み込む様子がリポートされていたり、おしゃれで日本でも人気な家具ショップ「イケア」の巧妙なディズニーランドまがいの顧客戦略。そういった巨大資本をシャットアウトすることで独自性を保とうとしているコロラド州ボルダー市の取り組み、群馬県太田市の「シャッター通り」がいつの間にか巨大ピンク街に変貌、など、とても人ごととは思えない話ばかり。

この本と呼応するのが、アメリカの現実をレポートして最近賞も受賞した「ルポ貧困大国アメリカ」(堤 未果 岩波新書 2008)これ、めちゃくちゃ「怖い」本でした。だって、明日のニッポンそのままみたいに思えたから。

株式会社化されて「医療」ではなく「営利企業」となってしまい、能率を重視する結果、切り捨てられて行くのは、患者たち。そして医者たちも。またサブプライムローンで「アメリカン•ドリーム」を実現するはずが、二度と浮き上げれない貧困状態におとしこまれた移民の姿。就職難で学資ローンを卒業後も払えない学士に修士。そういった貧困層の受け皿になっているのは、、、、「戦場ビジネス」。学資肩代わりをエサに新兵をリクルートする軍隊はもちろん、イラク駐留のアメリカ軍への物資補給その他を請け負う「民間企業」は、軍属ではないので何の保障も与えないまま、危険地域に労働者を派遣している。

この2冊の接点は、「新自由主義」の根っこにある「消費至上主義」ではないか? 「下流同盟」では、合理化によって因習的なものが排除されたあとの明るくあっけらかんとした野原のような状態に、次にやってきたのはデイズニーランドやラスベガス、ショッピングモールに象徴される「消費第一主義」という価値だという説が紹介されている。ウオールマートで買う「釘」は、100本まとめて格安。だけど、1本しか必要ないのに、100本単位でしか買えないのは、お得なのか?イケアの巨大なフロアで迷子感覚で歩くと、そこかしこに「目玉商品」が並べられている。「あら、安いじゃなーい?」と、次から次へと手にとれば、結局「ムダ使い」。しかも、安さの裏を支えているのは、超低賃金で働き、昇給可能性がほとんどない「パート従業員」。アメリカでも日本でも同じようなことが起きている。

してみるとアメリカの後追いが得意な日本の政府が「ワーキングプア」の受け皿として考えそうな事は、、、「戦争できるようにしようぜ!」でしょうか?


「下流同盟」の中の印象的なフレーズ。「労働で搾取されるのではなく、消費で搾取される(p237)」

この視線で世の中を見ると、ショッピングは、楽しいけど、、、東京の赤坂サカスだの、表参道ヒルズだの、ミッドタウンだのって、そんなにありがたいものかい?って田舎のオバサンは、畑の草取りをしながら思うのでありました。(そういえば、バブルの頃、東京の実家近くにいきなり「ゴンドラが浮かぶベニスを模したショッピングストリート」が出現した辺りから、私たちの勘違いが始まっていたんだろう、、、、)
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下流同盟―格差社会とファスト風土 (朝日新書)三浦 展

朝日新聞社 2006-12
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夕ごはん

カツオとホタテのカルパッチョ仕立て
ブロッコリ
納豆
さやいんげんときゃべつのみそ汁

あら?めずらしくお洒落なおかず???「花の収穫で忙しいでしょう」との友人からの差し入れでした.多謝。

7 comments:

  1. 最近読んだ「地球最後のオイルショック」に「ルポ貧困大国アメリカ」に出てきた固有名詞が登場するので「やっぱね、繋がってるんだよ、石油と戦場は」と思った。

    その固有名詞とは「アメリカ合衆国副大統領 ディック・チェイニー」と「ハリバートン社」。

    「ルポ貧困大国アメリカ」を読んだとき、ちょうど次回の選挙に出馬するつもりだという男性が街頭で「日本の少子化をなんとかしなければ、安心した未来をつくれませんっ!」などと叫んでいたので、「この本読んだら?」と、「ルポ貧困大国アメリカ」を差し出したい衝動に駆られてしまった(笑)もうちょっと勉強して大局観を養ってねって思ったわ。

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  2. 追伸
    大河とココアの記事、転載させて頂きました。今日、2匹の写真付きのお礼のはがきが来たよ。

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  3. >みかん様

    大河とココアの記事転載、ありがとうございます。あの二頭のことを考えていられるような平和がいつまでも続くといいなあと、ほんとうに切に思いますね。

    おりひめ

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  4. こんばんは。

    >「戦争できるようにしようぜ!」でしょうか?

    最近流れている、自衛隊勧誘のテレビコマーシャル・・・・あれを見て、自衛隊に入ろうと思ういまどき若者いるのでしょか????

    別口
    ”大河とココア”
    今日、郵便局にいく用事があり・・・いざATMの前にたち、、、伝票忘れた・・・・(汗)
    先日、親切な局員さんが教えてくれたんですけど、局併設のATMだと、機械の上部に振り替え伝票挿入口があり、そこから振り込めます。手数料が銀行より、全然安い・・・。
    そのへんの地下街のATMには、振替伝票挿入口無いそうです。

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  5. 私たちのお友達が翻訳した『なぜ安くしても売れないのか』にアメリカ、ドイツ、日本の消費者の傾向が書いてあって面白いと私たちのお友達が言っていましたよ。「倹約のための消費」というキーワードが面白そうです。

    下流と反対のところにある人々を書いた『ニューリッチ(原題Richstan)』は自分で読みましたが、世の中の貧富の差がどこまで行くねんと空恐ろしくなるような本でしたが面白くて一気に読めました。これまでの金持ちと違うところは保守的ではなくて自分たちの財力で世の中を動かそうとしているところだとか。

    医療の恐怖はやはりマイケル・ムーアの映画『シッコ(Sicko)』がおもしろコワかったです。日本よ、これまでのシステムの良い点を忘れないで下さい、アメリカのようにならないで下さいと心の中でずーっとお願いし続けながら見るような映画でした。

    自衛隊のリクルートの宣伝は、とにかく軍隊的であること、戦争をイメージさせることを極力避ける傾向にあるのですって。最もその傾向が顕著なのが陸自ですって。一番人気ないから。って日本の自衛隊研究をしている教授が言ってました。

    日本はまだまだ安易には戦争に流れないんじゃないかと。『映画日本国憲法』や九条の会に賛同する若者たちの声に触れるとそのように思うのですが、甘いかな。

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  6. >山女さま

    おひさしぶり〜。「私たちのおともだち」が翻訳してる本って、ニューリッチっぽい(というか、それを目指している)人がターゲットのものが多いような気がしますね〜。「儲けたいよ〜」って感じの層。(すでにニューリッチな人々は、そういった本で論じられている事柄の先をすでにやっていそう。)

    Sickoは、話題でしたね。「貧困大国アメリカ」は山ちゃんにはぜひ読んでもらいたいです。(文藝春秋の5月だか6月号に彼女の書いた後追い記事があります。特集テーマ「世界同時貧困」の号です。)学校の図書館でチェックしてみて。高額な医療保険を払ったら年収が200万円に落ち込んだアイビーリーグ出身の外科医の話とか、口あんぐりでした。

    アメリカ、大丈夫?

    九条の会に賛同する若者がたくさんいる一方で「蟹工船」がベストセラーになってる日本です。「マンガ蟹工船」まで出版されています。それだけ労働条件がキツくなってるし、閉塞感があるんだと思う。

    「閉塞感」って,危険な兆候だと思うんだけどなあ。

    おりひめ

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  7. アメリカ、だいじょうぶなわけないじゃん!

    最近の新聞の特集が「いかに節約するか、小金を稼ぐか」で、「いらない物を売れ」とか「近所のイヌの散歩で小遣いを稼げ」とかの記事でそういう記事がリアルに読者に訴える(と編集者が思う)ような世の中になってるのかなあ、アメリカのマスコミお得意の「煽り」かなあ、と情けなくなりました。

    情けないと感じるのはマスコミのトーンがあまりにもあからさまにくるくる変わるのが浅ましいと思うからです。

    蟹工船のベストセラーには驚いたよ!
    こないだ日系書店の店頭に並んでて。
    「なぜなの?????」だったんだけど

    > それだけ労働条件がキツくなってるし、閉塞感があるんだと思う。

    そうか。そういうことだろうね。
    苦しい人々、本当に増えているよね。
    閉塞感はこの地でもどんどん深刻になっているような気がする。まして日本は。。。。

    「貧困大国アメリカ」、この辺の貧困な図書館にはないだろうから、今度姪が来る時に「グーグー4」と一緒に買ってきてもらうわ。

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