2012-03-23

「1Q84」

ある人は「読み終わるのがもったいなくって、一章ごとに大切に読んだ」といい、また別のある人は「読み終わった時、『何これ!バカにするな~!きいっー!』と投げつけたくなった。全三冊¥6000をこの物語に投資する人の気持ちがわからない!」と嘆いた。

ふーん、一体どんな小説よ?

数年前に、出版前に予約殺到の「1Q84」です。え~っ?イマゴロ?ですが。

地元の図書館でずっと「第一巻」が返却されていない状態が続いていたのが、ようや3冊そろったのを発見。借りて一気読み。正味3日くらいで読了。

なるほど、極端に別れるふたつの意見もよーくわかりました。

あっという間に読めたのは、ひとつひとつの場面の情景が脳裏に浮かびやすいきれいな日本語で書かれているからと、「謎解き」の要素がたっぷりだから。モンダイなのはその「ナゾ」が最後に全て解明されないところ。読書に「ああすっきり!」のカタルシスを求めていると、「なんじゃこりゃ~!今までの時間を返せー!」と怒り爆発するのもわかる。

また、ふたつの世界が交互の登場して、次第にシンクロしていく展開なのだけど、そのシンクロの仕方が、「単語レベル」で溶け合っていく過程がよーく計算されていて、「うまいなあ」と感動。

また、主人公のふたりの気持ちのゆれがていねいに描かれているから、「うん、そうそう」と共感できる人、したい人には魅力的な小説かも。

ということで、「読書にあなたは何を求めるか?」で評価も分かれる物語なんでしょう。

私自身は、読みながら「あ、これはヘイセイの『君の名は』なのね~。」「主人公の天吾は、向井理で、青豆は誰だろう?牛河は温水洋一?」と、キャスティグ遊びをしたり、メインモチーフの「月」は、「天吾の『天』にも関係するし、なんと青豆の『青』にもはいってるけど、これ、狙ってるのかな?」など
ディティールは楽しみ、「虚構」と「現実」「善」と「悪」が不思議に交錯し、いろいろなものがシンクロする過程は楽しんだものの、、、

なんとなーく「すっきり」しない。これは、読後の謎解きがないからではなく、この小説がとっても「努力をして書かれた」感じが伝わりすぎたから。それから著者が思い描いている「女性性(?)」のイメージが、ちょっとイマドキ、どうなのよ?だったりしたので。長いマラソン(私は走らないけど)を好タイムで走れたのに、「うーん、もう少しできたのでは?」みたいな読後感でした。

私が読みおおせたのは、第三巻で急に存在感を増した「牛河」という人物が、極端に醜悪で、哀しい存在だったおかげです。登場人物の中で一番、リアルでした。彼は読者と、おそらく著者自身を反映しているのでは?

「すっきりしなささ」のもうひとつの原因が、小説の前半部分が、「空気さなぎ」というタイトルの小説の出版をめぐり、編集者が「売らんがな」のため、露骨に工作をするエピソードにあてられているところ。

あれ?この「1Q84」も、事前に情報を出さないなど、徹底的な「イメージ工作」をほどこして発売されたんでしたよね?この「シンクロ」も計算済み?そして、その「イメージ工作」でうっかりこの本を買って読んだ人は、「空気さなぎ」の工作くだりを見てどう感じたんだろう?

事前に空前の予約受付の報を受けた著者はどう感じたんだろう?

これが一番の「なぞ」です。

あ、文庫でも発売なのね~。おススメするべきか非常にビミョウな一冊、いえ三冊(いえ、文庫だとなんと6冊!)です。


1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)村上 春樹

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夕ごはん

豚肉のしょうが焼き
ポテトサラダ
根菜の煮付け
ながいもすりおろし
ほうれん草のおひたし
にらとしいたけのみそしる

2 comments:

  1. こんにちは。
    私も図書館で借りて読みました。
    『ノルウェイの森』を読んで、読んだ時間を損したと思ったのですが、これだけ話題になった作品なのでもう1回だけ村上作品にトライしてみようと読んだのです。
    こちらの図書館ではいまだに予約数がかなりありますので、図書館で本が並んでいるのを借りるというのは無理そうです。
    私の感想は、結構面白かったけれど、青豆と天吾が再会する物語にふしぎな周辺の存在をつけくわえた大人のおとぎ話なのかな、です。
    村上作品にはもう手を出さないと思います。
    ちなみにAudibleでこの本がセールになっていた時に一時ダウンロード数が1番になっていました。

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  2. sunset様 コメントありがとうございます。ほんとうに話題になりましたよね。「1Q84」についてはブログで書いたとおりですが、村上作品については、これから出るものがどんななのか?はとりあえず「一回」くらいは挑戦してみようと思っています(^^;)。(大昔、流行中に読んだ「ノルウエイの森」は、途中で投げました~。)

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