2012-04-05

「店じまい」

今日は特に予定もない「休日」。ひさしぶりに眺めるお昼のテレビではあいも変わらず「こだわり食材」をふんだんに使った「こだわり料理」のお店が紹介されている。

それはそれで美味しいのだろうけど、実は「ふつうの食材」を「ふつうに美味しく」の方が、心惹かれませんか?

石田千という作家をはじめて知ったのはある雑誌。朝、6時に起きること。ラジオ体操をすること。一日原稿用紙に3枚書くこと。銭湯が好きなこと。そして9.11以来テレビを見るのをやめたこと。そんなことが書いてあって興味をもち、「月と菓子パン」という本を読んでみた。

「ふつうの話」を「ふつうに書いて」いるのに、とっても「美味しいお話」で、以来気になっていました。さそして最近読んだのが「店じまい」(白水社 2008)という一冊。

東京の(そして全国の)「ふつうの」私鉄沿線なら、どこにでもあっただろう、蕎麦屋、化粧品店、瀬戸物屋、屋台のおでんや、レコード店、本屋、そして銭湯。著者自身の子供時代の「おつかい」の記憶もはさみながら、そんな「ふつうの」お店がいつしか「長年、お世話になりました、、、」の貼り紙と共に「店じまい」をする。

そんな瞬間に立ち会ったり、立ち会えなくっておろおろしたり。

決して「昔はよかったね~」でもなく、「○丁目の夕陽」みたいなノスタルジーぷんぷんでもなく、ただ「店じまい」をする、という事実を受け止め、「しめたから、はじめられる」と気づく著者がいる。

登場するお店は、どれも「ふつう」だけど、しっかり商いをしてきたのだよ、それでも「店じまい」する瞬間はあり、それは「はじまり」の瞬間であるのだということが、抑えた筆致から(抑えているからこそ)伝わってくる。そして、どのお店のことも深い愛情と尊敬をもって書いている。

主に東京の小さい町にある数々のお店のことを書いているのだけど視線は、なぜか、アラスカの大自然の「諸行無常」を描いた星野道夫さんと似ている。

なかでも「活字」「本」に愛着があるのだなあというのが、後半、よくわかります。本屋さんの「店じまい」が描かれた一編は、次のように「しめ」られていました。

足もとを見る。一本の木なのだろうか、森のなかのひょろついた一本だろうか、日かげの苔だろうか。ひとつひとつ近づくと、影のおうにまわりこみ、逃げていく。全体もひとりも、つかみどころがない。 作るひとも、売るひとも、買うひとも、膨大に増え続ける本の速度に、気持ちもからだも追いつけなくなっている。 森がきえていくときとおなじように、立ちつくす。 森があったことを語り継ぐだけになっては、いけない。そのことだけ、わかっている。(p213) 

個人的には、イタリアンレストランの「ジロー」の赤と白のチェックのテーブルクロスが、ツボでした。私も「ジロー」で、はじめて「ピザ」を食べて、「世の中に、こんなに美味しい食べものがあるとは!」と大感動した1960年代生まれです。


店じまい
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本日の写真は、いただきものの「ネコハウス」、最近、お気に入りになったみたい~の図。

夕ごはん

カジカ鍋

「豆腐鍋」のリクエストだったのですが、なぜか、カジカがメインに。


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