2008-04-24

「日本人と戦争責任」

ちょっと凹んだ日。小さい事なのだけど、ちょっとムキになってしまい、後でハンセイ。いえ、「善意のかたまりって、ほんとに善?」みたいなことにひっかかってしまったから。それも、こんな本を読んだせいかもしれない。

「日本人と戦争責任」(森達也、斎藤貴男 高文研)

内容は、元軍国少年で、海軍に自主入隊して戦艦武蔵の乗務員となるが、奇跡的に戦後生還した渡辺清という人の文章を読み解きながら、戦後生まれ(1950年後半生まれ)のふたりが、日本の戦後、戦争責任について対談しているもの。まず、渡辺清という人は、戦前の思想をまるごと飲みこみ、「お国のため、天皇のため」戦争に行ったが、帰国後、マッカーサーと天皇のツーショット写真を見て、衝撃を受け、そこから「天皇の戦争責任」ひいては「自分の戦争責任」について死ぬまで思索した人であり、森達也は、冒頭から「こういう生き方をしている人について戦後生まれでぼんやりとしている自分が語る資格が果たしてあるのか?」の自問からはじまる。重いテーマだから、ここで紹介しきれない。ただ、森達也の本だから、徹底して「一人称」に、こだわっている。だから最初は、敗戦後、退位しない、自刃しない天皇に怒りを感じながら、最終的に「では、自分に責任はないのか?」の洞察にまで達した渡辺氏と重なる部分もかなりある。

この「自分は、ど〜よ?」の意識ってとても大切だ。忘れがちだけどね。

それにしても、日本の高度経済成長の大きなバックボーンにベトナム戦争特需があったとか、直面しちゃうとやはり気が重いテーマでした。ナチスのアイヒマンが、法廷で「上官の命令を実行しただけの自分に責任はない」と何度も弱々しく主張したそうで、これは、組織の暴走の例。戦争の本質だとの指摘も。つまり、「上から言われたこと」を下に伝える中間管理職の意識の肥大ということ。これって、今のどこかの国でのいろいろな破綻と同じですよね〜。

今日の凹みのもととなった一文は
悪意は後ろめたさがあるから簡単には暴走しません。でも善意や正義は暴走する。あっさりと大量の人を殺すことができる。(p175)


日常生活のささいなことでも、「悪気はないんだから〜」のノリでずるずると許しちゃっているのも、多くの場合、「もめたくない」「ギクシャクしたくない」ってあたりの「空気読み」が働くからだろう。「悪気がなかった」としても、「やっぱり、まずいんじゃない?」と疑問を投げかけることで、展開が変わる事もある。そういういことの積み重ねが、理解につながるんだと思うのだけど、なかなかね〜。「対話」にならないで「ケンカ」になっちゃうのは、私が未熟だからでしょうか?いえ、夫婦ゲンカのことじゃーないっすよ。念のため。
日本人と戦争責任―元戦艦武蔵乗組員の「遺書」を読んで考える
日本人と戦争責任―元戦艦武蔵乗組員の「遺書」を読んで考える斎藤 貴男 森 達也

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夕ごはん

厚揚げと小松菜のいためもの
イカの塩辛
つわぶきの佃煮
長いもすりおろし
あげとわかめ、ねぎのみそしる

4 comments:

  1. こんばんは、かずです。

    アイヒマンの記述がとても印象的でした。
    常に”皆と同じ”が嫌いなわたし・・・

    「一人殺せば殺人犯、二人殺せば極悪人、100人殺せば・・・・国家の英雄」

    「異教徒は、悪魔」ヒトではないから殺していいんだろう。

    こんなことを、以前から思っておりました。

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  2. 佐藤優さんも、同じようなこといってました。うろ覚えで、出典もさだかではないのだが、(たぶん立ち読みした本だなあ、買うお金がなかった 笑)「正義」という、行為を正当化する後押しがあるからこそ、暴走し、殺しができる。って感じの話だった。内容は森達さんと同じ。

    善人ほど、たちの悪いものはない。

    自戒も含め、実感です。
    曽野綾子さんが、「善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか」って本を書いてます。わたしはおもしろかったけど、つまんないって思う人も多いみたい。

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  3. 「悪気はないんだから」ってねー、突き詰めていくと「いったい悪気というものは世の中に存在するんだろうか」ってとこに行ってしまう。
    それで誰のことも責められなくて「じゃあなぜあたしは気分が悪いの?」って悶々とすることがよくあります。
    だから「(悪気がなかったとしても)やっぱりまずいんじゃない?」っていうのは使えそうだなあ。
    今度からそれ、座右の物差しにします。

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  4. >かず様

    本を紹介してくれてありがとう。あっという間に読んじゃいました。私は、「ナチスは、最初、共産党員を弾圧した。自分は、共産党員じゃなかったので、無関心だった。次に、社会主義者を弾圧した。このとき、おや?と思ったが、自分には関係なかった。そのあと、教会関係者を弾圧して、自分がそれにひっかかるなんて想像もしなかった」というのが怖かったです。

    あっという間なんだろうな。

    >みかん様
    曾野綾子さんですね。今度図書館でさがしてみよう。私も本を買う余裕がないんです〜(涙)。だけど、今日本やさんで「女子の古本屋」という本をながめて、この手があるのか〜。と思いました。大変そうだけど、あこがれる職業だな。自分とテイストのあう本だけを集めてネットで売る古本屋さん。どう?みかんさん?副業で?

    >山女様

    そうそう。「悪気は、ないんだから、、」って、ズルいと思うんです。難しいのは、世の中のだいたいのことは。それで済ませた方が、うまくまわるということ。

    「悪気がないからこそ、ヤバイ」というところへのアンテナをどうはっていくか、ですね。

    座右の下敷きにしてみよう。

    おりひめ

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