図書館から借りた「ネットカフェ難民と貧困ニッポン」。「ネットカフェ難民」というのは日本テレビのドキュメンタリーではじめて使われた言葉なのだが、その言葉を「発明」した担当ディレクターが、自ら追った「ネットカフェ難民」とそれをめぐる社会状況をまとめたのが本書。長年、紛争地域の「難民キャンプ」の取材をした筆者が、ホームレス寸前でネットカフェで生活している人々と最初に触れたときに受けた印象が、キャンプで出会った「難民たち」と重なったのが、言葉が産まれた背景。偽装請負や、いわゆる「派遣」で働き、ギリギリの生活をして、24時間営業のネットカフェやハンバーガーチェーンで夜を過ごす人々の話題はテレビニュースでもとりあげられるようになっていたし、桐野夏生の「メタボラ」でも触れられていた。「仕事をえり好みしているうちにマトモな仕事につけなくなったひと」「世間をなめている人」「甘えている人」などのイメージを持たれやすいこの立場の人々だけど、そういう視線こそ「自己責任論」というよくわからない最近の風潮にのみこまれているだけではないか?と、本書は問題提起している。「深夜パック」を提供するネットカフェに限らず、格安コインロッカーや、コインランドリー、または敷金礼金ゼロで部屋を貸す「ゼロゼロ賃貸」、NPO福祉法人を名乗り、生活保護の申請を手伝い、部屋と食事を提供するから、その分の代金を生活保護費から、さっぴくという商法で利益を稼ぐ業者など、「貧困ビジネス」まで生まれ、一度その負の連鎖にはいりこんだらはいだせないようになっている現実は、読んでいて「これが日本?」と思わずにはいられなかった。
昨日紹介したイランの貧しい農村の物語とは,同じ貧困でも全く様相が違う。「ネットカフェ難民」は、家族や、コミュニティから完全に切り離されて浮遊している「個」でしかない。「個」でいることが可能な社会でこそありえる貧困なのかもしれない。
そんな中でも、自立支援や、派遣ユニオンなどを通してなんとかサポートしようとしている人々がいることが救い。ホームレス寸前の生活を送りながらも携帯(仕事を得るためのマストアイテム)から自分のブログを更新する「難民」の姿には、まさに「携帯」が世の中とつながるための生命線なんだなあと胸が痛くなった。さらに国の政策への疑問と同時にマスコミが貧困、生活保護の問題をどう扱ってきたか?に関しての反省もあって、読み応え満点。
よく耳にする「格差」という言葉については、自立生活サポートセンターを切り盛りしている男性のこの言葉が印象的。
比較の概念である「格差」はあっても仕方がないもの。しかし「貧困」はあってはならないもの。世の中から消滅させることが政治家に義務づけられている。(中略)だからこそ政治家は「格差」という言葉を好んで使い、「格差があって何が悪い」(小泉純一郎元首相)と居直った発言をするのに、「貧困があって何が悪い」とは口が裂けても言わない。なぜならそれは政治家として無能だと暴露しているのと同じだから(pp245)
先日の上京で、様変わりした丸の内周辺を見て、「アメリカの大都市のダウンタウンの銀行街みたい」と思ったのだが、格安ネットカフェがあふれているという蒲田周辺もきっと大きく様変わりしているのだろうな。ユザワヤだけじゃなくってね。
ネットカフェ難民と貧困ニッポン (日テレノンフィクション 1) | |
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夕ごはん
秋刀魚のコチジャン煮
チーズポテト
納豆
高菜漬け
とうふとニラのみそしる
札幌の大通りの地下鉄コンコースで「ビッグ イッシュー 日本版」が販売されるようになりました。
ReplyDeleteお恥ずかしい話なのですが、実際、目にするまでは、気がつきませんでした。雑誌の存在はなんとなくわかっていたのですが。
この間も、いったん通りかかってから、引き返して一部購入しました。次は、バックナンバーで、興味がある本を購入したく思います。 ただ、販売時間に間に合わないのが悩みの種です。
とりとめのない投稿で、ごめんなさい。
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ReplyDeleteビッグイシュー、評判いいですよね。内容がしっかりしているみたいだから、長続きするといいなあと陰ながら応援しています。
ReplyDeleteおりひめ
おお、そうか、名付けた人が書いた本か。
ReplyDeleteこりゃおもしろそうや。
ゼロゼロ賃貸なんてグッドな救済策のように思えますが、負の連鎖という見方もあるのねえ。
見方というか、現象なのだな。ふむふむ。
こりゃ読まなきゃねえ。
私の本棚と読みたい本リスト、おりひめさんに薦められた本が並んでるわ〜(並んでるだけでなかなか読めないのがつらい)
山女様
ReplyDeleteゼロゼロ賃貸は、大問題。家賃の納入が一日でも遅れたら,部屋のカギを即交換。家財道具一式ごと没収。「鍵のやりとり」が契約内容だから、一般的な賃貸契約にはあたらないこれまたグレーゾーン。故に「貧困ビジネス」なのです。
と、言うような事もこの本を読んで知りました。
安易な「自己責任論」は、「強者」の側にいる人の「論理」だなあというのが読後感。
おりひめ