「わたしの渡世日記(下)」(高峰秀子著 朝日新聞社 1976年)は、その中のひとつ。
戦前の日本映画界と世相を背景に自らの生い立ちを描いた上巻同様、下巻にも戦後の映画業界の有様と世相、そして著者が出会った当時の著名人とのエピソードがぎっしり。華やかな映画界の仕事とは裏腹に、火の車の家計を支え、深刻化する義母との対立が繰り返される著者の私生活。
キイワードは「眼力(がんりき、めぢから)」。
自らの絵のモデルになった高峰秀子の目について、梅原龍三郎は「目が大きいのかと思ったら、目の光が強いんだ」と評する。その「眼力(めぢから)」は「眼力(がんりき)」に通じる。
書き方によったら、イヤミになりそうな各界著名人(谷崎潤一郎、梅原龍三郎、川口松太郎、有吉佐和子など)との「交友録」も清々しく読めるし、私生活のドロドロだって「暴露本」になる一歩手前。そうならないのは著者が「自分」を冷徹に観察して客観性を保つ「眼力(がんりき)」があるからに違いない。
その「眼力」が、彼女の一番の魅力で、それがあったからこその「高峰秀子」なのだと思う。それがどこから来るのか?の答えは、実は著者自らが次で語る「心の豊かさ」と関連ありそう。
世の中には「ただ、その人が存在する」というだけで、なんとなく心強く、心の支えになる人がいる。精神的スポンサーとでもいうのだろう。(中略)この人たちの、積み重ねた教養と勉学にプラスされた「心の豊かさ」に、私は心を引かれる。立派できびしい仕事を持っているから心が豊かになるのか、心が豊かだからきびしい仕事に耐えられるのか、頭のよわい私にはわからないけれど、遠くの方からこっそりと尊敬し、勝手に精神的スポンサーだと思いこんでいるわけだから、先方には迷惑もかからないだろうと、私は甘えさせてもらっている。(p317)
文章のリズム、内容、構成も秀逸。高校生に読んでもらいたいな。
わたしの渡世日記〈下〉 (文春文庫) | |
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夕ごはん
ハンバーグ
小松菜のいためもの
ブロッコリ
ぬか漬け(キャベツ、きゅうり)
しいたけと昆布の佃煮
納豆
わかめとしめじのみそしる
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