2009-09-21

煮詰まる個性?

あまりの面白さにあっという間に読んでしまったのが「老人介護ーじいさん、ばあさんとのつきあい方」(三好春樹 新潮文庫 2007)初出は1998年のこの本。「生活リハビリ」「おむつはずし学会」などで活躍している介護のプロによる本。高校中退から様々な職歴を経てのち、介護職につき、その後理学療法士の資格をとった著者の視点は、「現場主義」「全体として人間をみる」という部分が際立っている。

現場で、キョーレツな個性のじじばばとの生活にどっぷり浸かったあとで受けた「理学療法士」になるための「専門知識」の明晰さに感動しつつも、それが「現場」に生かされていないことに憤り、「人は『部分』でなく『全体』で見るべき」と気づく。さらに、「訓練のための訓練」に異議を唱えるおばあちゃんに頭(こうべ)を垂れ、リハビリ訓練では動かないからだが「目的」を持った途端に動く様に目をみはる。「白衣の天使」ナイチンゲールの先見性を再発見しつつも、その精神が生かされているとは言いがたい医療現場に喝!

シモジモからの視点の力強さアリアリ。

それをレヴィ・ストロースの「文化相対論」を援用して、老人を劣ったもの、衰えていくもの、と見る視点は、『進歩主義』という理念にすぎない。西洋が非西洋を蔑視しているのと同じであり、「若さ」を中心にすえた「自世代中心主義」にすぎないと批判する。(「部分より全体」「分析より受容」って、ケア現場に限らずこれからの世の中でKEYになる考え方かもしれない。)さらに、以下の抜粋の部分は、「老人」を「こども」に置き換え可能。

老人のゆったりしたペースに私たちが合わせるとき、老人たちの目は生き生きとしてくる。逆にこちらのペースで老人に関わるとき、老人たちの目は虚ろになってくる。そのとき私たちは老人の固有の時間の破壊者なのであろう」(p248)


具体例に登場するじじばば、ケアの現場の人々は、みなさん個性豊か。エピソードは笑いがたくさん。「介護」本というより「人間万歳!」本。

「年をとると人格円満になるどころか、個性が煮詰まる」の下りには、そうかもねえ、、、と思い当たる顔、顔、顔。

私もそうなるのかなー。うわーっ!どんな部分が煮詰まるんだろう。。。。と、ここまで書いて、ふと、気づきました。本日「敬老の日」(!!)。「煮詰まった」数多(あまた)の個性にカンパイ!

老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた (新潮文庫)
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夕ごはん

豚肉とニンニクの芽の炒め物
オニオンスライス
きゅうり
納豆
いくらのしょうゆづけ
きのこのみそしる

2 comments:

  1. お、まだ煮詰まってる自覚がないと見える。。。

    ふふふ。またおもしろそうな本の紹介をありがとう。そうなのよねー。分析より受容なんだよねー。今日、初めて俳句というものを学んだヤツラの目は限りなく空ろだった。。。。

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  2. >山女さま

    えっ!?煮詰まってます?そんなに?佃煮ですか?ワタクシ?HAIKUは、私にもムツカシイ。「わかると思うな、感じろ!」がんばれ!ヤツラ!

    おりひめ

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