今日ご紹介の本は、「スゴい人」バージョン。アラスカの自然を撮り続け、日本人と現地の太古からの関係を追う旅の途中、ロシアのカムチャッカ半島でクマに遭遇して客死した星野道夫さんの「ノーザンライツ」(新潮社 1997)。英語教室の保護者の方が貸してくれた本です。
星野氏もさることながら、この本の登場人物、みんな「スゴい」。冒頭をかざるのは、第二次世界大戦直後の1946年、2機の小さい飛行機が、12月から1月の一ヶ月をかけて、シアトルからフェアバンクスまで旅をしたふたりの女性、ジニーとシリアのエピソード。そしてこのふたりを起点に、幻と終ったアラスカ核実験場計画、その計画阻止の運動に関わり、アラスカを愛しながらその地を離れなければならなかった動物学者、さらには太古の狩猟民と同じ生活を送る若者、荒れ放題の墓地を復興させたネイティブアメリカンの青年。共通項は、アラスカに魅せられたり、彼の地としっかりつながっている点。そして誰もが魅力的で「スゴい」。
テーマはアラスカという大自然とその旅なのだけど、人間が描かれている。というか、大自然の一部としての人間か。逆にいうと、ほんとうの意味での「人」との出会いがない「旅」は魅力的ではないのかも?
が、セスがいることで,自分の中のアラスカはある輝きをもっていた。人と出会い、その人間を好きになればなるほど、風景は広がりと深さをもってくるように。(p131)
そんな輝きを持つ土地にしっかり根付いて生活している人々と接しながら、拠点はアラスカにあるものの「日本人」である星野氏の中で「アラスカ」と「日本」はどう折り合っていたのかな?彼の未完の仕事は、その点と関係していたんだろうな。
シリアのこの言葉も印象的。
人間が生き延びてゆくために一番大切なのは怖れという感覚をもてるかどうだと思う。グッチンインディアンの世界で昔、それは飢饉のことだった。が、今は少し違うと思う。もと大きな自然に対する畏怖のようなものだよね、、、(p183)
透明感にあふれた文体で、とにかくデカいアラスカ、そしてそこで素朴に生きる人々の物語を読んでいると、流行の「スローライフ」とか「ロハス」がなんとなーく薄っぺらに思えてしまいます。
アラスカのお隣の国でもうすぐ終ろうとしている「金」や「銀」の大騒ぎとも無縁な世界にちょっと、「ほっ」としたり「はっ」と我に返れたり。
忙しくて疲れているときに読むといい本かな。
ノーザンライツ (新潮文庫) | |
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夕ごはん
ホッケの塩焼き
チーズポテト
大根のつけもの
納豆
とうふとなめこのみそしる