それは、つまりこういうこと。
地球の歴史を振り返るとき、例えば一億年というタイムスケールは、私たちの想像を超えている。(中略)しかし、一万年前は違う。人間の一生の長さを繰り返すことで歴史を遡るならば、一万年前は、実はこのあいだの出来事なのだ。干上がったベーリング海を渡り、マンモスを追ったホモ・サピエンスは、それほど遠い人々ではない。(p160)
私にとっては、「一万年前」だって、立派に想像を超えている。ところがアラスカの大自然を放浪し、トウヒの倒木から苗木が育つ様を目撃し、カリブの骨をみすえる星野道夫にとっては、「一万年前」と現在をつなぐことはごく「あたりまえ」のことだったのだろう。そして、「生」と「死」もあたりまえのようにひとつながり。
個の死が淡々として大げさではないということ。それは生命の軽さとはちがうのだろう。きっと、それこそがより大地に根ざした存在の証なのかもしれない。(p174)
「イニュニック(生命)」(星野道夫著 新潮文庫1998)には、タイトルどおり、たくさんの生命が描かれている一方、友人を含めたたくさんの「死」も描かれている。それも「淡々」と。
その「淡々」とした文体がなんとも魅力的。どうしてこんなにかっこいいか?もしかしたら徹底して「自分」のことを排除している強さではないだろうか。自然に対しては「視線」で、人間に対しては「傾聴」を通して「感じたこと」が表現されているのが星野道夫さんの写真であり、文章であるんだろう。だから「ほんもの」。
失われつつあるエスキモーの暮らし、考え、言葉について大げさに嘆いたり憤ったりしない。アラスカにもしのびよる環境破壊についても決して声高に反対するわけではない。事実を綴るのみ。それは、もっと大きな「時間の流れ」「自然のあり方」についての視野の広さのスケールの違いのように思える。
「ちっちゃいこと」が気になっちゃう時には、おまじないのようにこの人の書いたものを読むとバランスとれるかもって思いました。
イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する (新潮文庫) | |
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ここ数年、日本語の本は仕事関係以外は、ほとんど買わないんだけど、この人のはオトナ買い衝動ありっ!(はーと)
夕ごはん
野菜の天ぷら(ニラとえのき、ゴボウ、にんじん、チクワ、ピーマン)
納豆
わかめと麩のみそしる
ご無沙汰していました。
ReplyDelete久しぶりにお邪魔した今日の日記、星野さんの「ほんもの」の魅力に出会わせていただき、とっても感謝しています。
ほんとに、星野さんの本には外れがなさそうですね。
Amazonが全品送料無料中だったので、ご紹介いただいた本と、もう一冊文庫を衝動買いしました。
ちっぽけな悩みが消えてなくなりそうです。
まりもさま
ReplyDeleteおひさしぶりです♪星野本の魅力は、もう私の駄文読んでないで、とにかく原文を読んでー!のひとことです。「悩み」が消えるかどうかは、わからないけど「微生物」くらいのサイズに見えてくるかも(笑)?