2010-12-09

「永遠のゼロ」

「センセー、北朝鮮は攻めてくるの?」とたずねてきたのは中2の男子。「武器マニア」です。

さあ、どうだろうね。ただ、もし今、戦争が起きたら、君たちは確実に徴兵されちゃうよ!地方に住んでるエリートじゃない若者なんて、格好のターゲット。

って、答えたのがほんの一週間前。ああ、この本を読んだ今は、その自分の言葉に押し潰されそうな気分。

知人が貸してくれた「永遠のゼロ」(百田尚樹著 講談社文庫2009)の「ゼロ」は零戦のゼロ。零戦のパイロットで最後は特攻作戦で齢26歳で命を落とした祖父の足跡を、終戦から60年目の夏に、司法試験に落ち続け、人生の方向性を見失っている26歳の孫が追っていくというのがストーリーの骨格。

これがねえ、ものすごいのですよ。小説なのだけど、史実が緻密に描かれているため約600ページの大作。主人公の祖父である宮部久蔵という男が、ある人に言わせれば「天才パイロット」。別の人から見ると「臆病者」。またある人は「日本にとってかけがえのない人物」と、まるで万華鏡のような「謎」に満ちた人物。

謎解きのようにページをめくるうちに、しみこんでくるのが太平洋戦争に関する膨大な史実。特に「航空隊」についての描写が秀逸。「戦争」と「個人」のかかわりというものが浮かび上がってくる。

特攻隊員は、果たして現代のイスラム過激派と同列で扱えるのか?当時の日本人は「洗脳」されていたのか?日本軍とアメリカ軍は何が違っていたのか?そして、日本の技術力は、当時の世界標準からみてどうだったのか?「愛国心」って何だろう?

など、ノンフィクションとしても読み応えたっぷり。

官僚組織としての「日本軍」の脆弱さも語られているのは、現代の日本の中枢に起きている問題とシンクロするし。

ああ、ほんとに、ちょっとした風向きの違いで、おりひめ教室の中学生くんたちが徴兵されちゃうかも、、、ってリアルに背筋がぞっとします。戦争は、「ごっこ」遊びと違うんだよ。

小説としては、最後の最後に「なんだって~!?」と思わず叫びたくなる大どんでん返しも用意されています。

宮部久蔵が、もうこれでもか~!というほど「男前」なのです。その「男前」度に「感染」した人たちが、すべからく「かっこよく」生きている部分を特に、若い男の子、女の子に読んでもらいたい。(映画にするなら、ぜひ「SPくん」に主役を!。ぼそっ。)

この小説じゃあ、ちょっとヘビーな層には、漫画もあるみたい。こっちを教室用に準備しようかな。
永遠の0 (講談社文庫)
永遠の0 (講談社文庫)百田 尚樹

講談社 2009-07-15
売り上げランキング : 141


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

永遠の0(1) (アクションコミックス)
永遠の0(1) (アクションコミックス)画・須本 壮一・作・百田 尚樹

双葉社 2010-07-28
売り上げランキング :


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


夕ごはん
糠さんま
ポテトチーズ
大根の漬物
納豆
長いもすりおろし
にらとしめじのみそしる

5 comments:

  1. あら、おもしろそうねー、これ。

    イスラム過激派の自爆ですが、身内がこれを「やらされた」という人がラジオでしゃべってるのを聞いたことあります。

    「聖戦のため」と自らやっちゃう人もいるんだろうけど、この人のお姉さんみたいに組織や家族から圧力をかけられて、おなかの中に爆弾を縫い込まれて泣きながら車に押し込められちゃう(車ごと自爆)ケースが実は多いのだと戦慄しました。

    特攻の人たちの中にもいろいろな想いがあったに違いないよね。読んでみたいです。

    ReplyDelete
  2. わたしも読みたいけど、うちの旦那にも読ませたい。なにしろ、戦記&戦闘機マニアなんで(笑)でも、ゼッタイ読まないだろうなあ。わたしが勧めると、なぜか反発するのよね〜。

    ReplyDelete
  3. 山女さま

    本書のテーマのひとつが「特攻隊員は狂信的な愛国者」というレッテルを外すことにあるみたいです。そんなに単純じゃないよ。あたりまえの感覚をもったふつうの人間が、どうしてそこに「追い込まれたか?」が、描かれているの。読みながら、私も「イスラム過激派」もそうかもしれないなあって思っていました。

    ReplyDelete
  4. みかん様
    「児玉清氏絶賛!!」が、本の帯の惹句。だんなさん、これでもダメかな(笑)?

    ReplyDelete
  5. 読んだっす!おもしろかったですよ〜。詳しくはこちらをご覧下さい↓
    http://blogs.yahoo.co.jp/delightful_mikan/62415973.html

    ReplyDelete