2010-05-06

"Grandfather's Journey"

北海道に来てから、実家にたまに戻る以外はほとんど旅行もしていない。アメリカで数年間生活したときも、現地の観光地、名所旧跡を勢力的にめぐる、、ということもなかった。二泊三日で旅行してもねー、どうせなら2、3ヶ月行きたいよねーなんて妄想抱えているから、どこにも行けません。とほほ。

どちらかというと、知らない土地で「どっぷり」生活する方に興味があるのです。

この「生活」というのは不思議なもので、観光旅行なら「見るだけねー」で通り過ぎることが可能な出来事にいやおうなく巻き込まれ、そのうちにそれが大げさな言い方をすると血となり肉となり、まるで新しい靴にだんだんはきなれていくような感覚で自分の一部になっていく。

それでも「前にはいていた靴、あっちの方が、はき心地よかったんだよねー」と思ったり。

もしかしたら外国や異文化で長く生活したことのあるひとがときどき感じるだろう不思議な「違和感」「不安定」な気持ち、それが描かれているのがAllen Say という日系人がかいた絵本"Grandfather's Journey".著者のおじいさんが主人公。憧れのアメリカに少年時代に魅せられ、「夢のカリフォルニア」へ移住を果たす。ところが日本が忘れられずに帰国。そうすると今度は「アメリカ」が懐かしい。太平洋戦争が勃発し、焦土となる日本。そこで孫である著者に「カリフォルニア」について語るおじいさん。時をへだてて、著者自身がまたアメリカで暮らすことになる。

The funny thing is,the moment I am in one country, I am homesick for the other.(p31)(おかしなことに、片方の国にいるときは、もうひとつの国がなつかしくなるんだ。)


そして、著者は、はじめておじいさんを理解できたことに気付く。

30ページ足らずの絵本。英文も簡単で、ストーリーはシンプルなのだが,何よりも「絵」が不思議。日系人の著者が描く「日本」の風景と「日本人」は、「日本在住、生まれたときからずっと日本」のひとの絵だったら、絶対こうならないだろうの、違和感のかたまりのタッチ。特に人物の無表情具合、目の細さは「日本」をイメージする「外国人」ならこうなるかもでした。ほら、イチロー人形やイチローの似顔絵って、私たちからみたら、全然「イチロー」に見えないでしょう?あれみたいな感じです。

これが、作者がアメリカの国内に向けて「あえて」この手法(世の中が思う「NIPPON」のイメージそのままを描くこと)を選んだのか、彼の目から見た「日本」が、実際こうなのか?と、そうなってくるとAllen Sayというひとの「ハイブリッド(雑種)」性、彼の中の「日本」と「アメリカ」の不安定さが余計に魅力的に思える一冊。
Grandfather's Journey
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で、私はといえば、「あっちの靴もいいけど、こっちもいいかな。」程度の「文化受容」度。靴より裸足なのかも(笑)こちらの「靴」をさらにはきなれるため、明日は近所のお葬式お手伝いです。ブログの方も英語レッスンもお休みです。

いつも読んでくださってありがとうございます。

夕ごはん
イカの刺身
野菜テンプラの甘煮
干し椎茸と昆布の佃煮風
里いもの煮付け
納豆
ニラとあげのみそしる

5 comments:

  1. 今日の話、胸がジーン。わたしのアメリカもそうだったな〜、って。一度目日本に帰って来たら、アメリカで思ってた日本とちがってて、もう一度行ったの。2度目に帰国する時はすごく気をつけて思い残すことがないか何度も気持ちを確かめて日本に戻りました。それでも10年ぐらい、変な感じでした。今でもときどきなんで自分はここにいるんだろうとおもうことがあります。あの時のアメリカはもうないことはわかっているんですけどね〜。
    "Grandfather's Journey"、読んでみます!
    感謝

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  2. “片方の国にいると、必ずもう一方の国が懐かしくなる”という感覚、痛いほどわかります。
    おりひめさんは「裸足」だったのですね。
    とても参考になります。

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  3. まりもさま
    まりもさんも、いろいろな意味でハイブリッドな生活を経験なさっていますよね。あちこちで生活すると、どの靴はいてたのかわからなくなります。最終的には、「靴」は「靴」だなって最近思います。(なんのこっちゃ)「靴」に自分の足を合わせるのってイタイなあって
    こと。

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  4. 吉田さま
    Allen Sayさんのもう一冊の本もそのうちご紹介します。こちらの方は、「帰国子女」がズバリのテーマ。

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  5. 読みました。絵が良かったです。アメリカで日本の移民の歴史を勉強してが〜んとなったことがあります。絵本の祖父一家は豊かな一族のようで、それが面白かったです。
    「帰国子女」の本の紹介、楽しみにしています。
    それと"Matilda"、すっごいよかった!!彼の容赦ない毒がこの本では生きてますね〜。わたしにはドキュメンタリーより物語の方がいつも怖いです。

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