2008-08-08

愚か者は、ひとりじゃなかった。

北京オリンピックが始まりましたね。ということで、中国のことを書いた本をご紹介。「愚か者、中国をゆく」(星野博美 著 文春新書 2008)本書は、著者の中国旅行記。話の中心は、20数年前にバックパックを背負い汽車(列車)を乗り継ぎ、香港から、カシュガルまでの道中のあれこれ。「ホンモノの中国を体験する。」と、あくまでも庶民と同じ形の旅行にこだわったために、旅は苦労の連続。自分の若いころを振り返って書いてあるせいか、自身の恋愛問題もこの旅行に深く関わっているせいか、見聞記というより内省記のような体裁になっている。そこが、この著者の魅力で、異文化に接して衝突をする場面でも、単純な比較文化論に陥らず、あくまでも「自分」と「他者」との「違和感」を軸に訥々と語り考えを深めている。森達也がよく言う「一人称」の目線です。

実は、まさに同じような「バックパック」に「汽車」を乗り継ぐ「中国個人一ヶ月一人旅行」というのを、本書の舞台となっている時期の2ヶ月前に行なっていたのが,20代の私。もうひとりの「愚か者」です。彼女のように中国語に堪能なわけでもなく、気概もなかったので、飛行機やバス、外国人用の汽車チケットを使ったりもしたのだけど、「目的地に着いたら,次の移動用の切符をすぐ購入」「旅の刺激が強過ぎて,名勝地を見ても『普通』に感動できない」「非効率な切符売リ場」など、「そうそう!そうだった〜!」とくすくす笑いながら読めました。

当時、この初めての海外旅行を終えての感想は、「人間、どんな環境でも生きて行けるんだ〜」でした。驚くほど「無秩序」で、「ひとりひとりが『中華思想』」みたいなことばかりを経験したけど、それでも、人は、生きていける。うーん。「大陸的」ってこのことね。でした。

ということで、オリンピック開会式は、まさに「大陸的」なスケールの演出。チャン•イーモウ、天才ですねえ。一方で、あの開会式を見られないでいる人も中国国内にはたくさんいるんだろうと思うと、それも「陰陽」ってことでしょうか?

星野博美の出世作で、香港での日々が綴られている「転がる香港に苔は生えない」さらに東京での「違和感」を語る「銭湯の女神」(いずれも文春文庫)も、オススメです。

彼女によると、2008年8月は、天安門事件から19年2ヶ月。東京オリンピックが開かれたのは、太平洋戦争が終わって同じく19年2ヶ月だそうです。 
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夕ごはん

精進揚げ
もりそば
キャベツとキュウリのぬか漬け
 

5 comments:

  1. おお、おりひめさんの新たな一面を発見!なんて、楽しそうな青春でしょう。(もしかして、青春って、もう、死語かしらん?)
    わたしの青春は暗かったなあ。というか、私の人生、もしかして、暗いんじゃないの?まあ、いいや。
    只今、リビングのエアコンを取付中!エアコンのない一週間でしたが、ふだんからエアコンを多用してないのと、風通しがいいので、それほど苦しまなかったなあ。でも、この猛暑、エアコンは必需品です。

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  2. 道外の皆様、ごめんなさい・・・・・
    何故か、ここ札幌は、日中は温度上がるのですが、朝晩涼しく、窓を開けっ放しで寝ていて、あけがた寒さに目が覚めて、蹴飛ばしていたタオルケットと毛布、叩き落していた抱き枕を引き上げる日々です。

    星野さん、、、、新刊出たんですね。「銭湯の女神」しか読んでませんが、彼女のお父上がおっしゃっていた、”あまりにも安いものは、その金型を作った職人のことを考えると買いたくない”というような文章に、とても惹かれました。

    私個人は、一人旅はしたことないです。
    旅行は、どこそこに行った、というより、”いつ、誰と、何をしてそのときどう思った”に、重きをおくようです。
    つまり、一人では、行けないのよ・・・・
    軟弱者と呼んでください(泣)

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  3. わたしは、一人旅したいなあ。けっこう、ひとに気を使う質なもんで、完全にひとりになりたいですね。まあ、用心棒として旦那をつれていってあげてもいいいけど、旅先で絶対、間違いなくケンカするだろうから、やっぱり、ひとりが無難かも(笑)

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  4. 「旅」に何を求めるか、、、で形式も変わってきますよね〜。

    とにかく、遺跡や仏閣を見るためなら、目的地に到着するまでのストレスが少ない方が感動するのは、間違いないっ!

    私も単独行動が多い旅の方が好みかなあ〜。(←層じゃ無かったら,一ヶ月一人旅をしようとは,思わないかも。。)

    おりひめ

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  5. あ、わかった!

    私のは、”旅行”で、おりひめさんとみかんさんのは”旅”!

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