2008-08-24

スケールの違い

松本サリン事件の被害者だった河野澄子さんが亡くなったのは、ごく最近のことです。事件以降,寝たきりのまま14年。どんな思いだったでしょう。そしてそんな澄子さんの夫、河野義行さん。ちょっとスケールの違う人物ですよね。事件当初、自らも被害を受けながら、警察やマスコミに「犯人」扱いされて大変な苦労をしたはず。ところが、訴訟中の麻原被告のことを「未決囚だから」との理由で「麻原さん」と呼び、松本でサリンをまいた噴霧器付きの車を作った元信者さんに自宅の庭の手入れを頼んだり。知人がこの河野さんの本を貸してくれました。「命あるかぎりー松本サリン事件を超えて」(河野義行著 第三文明社)。内容は、松本サリン事件についてや、犯罪被害者の保護について、冤罪防止策について、司法やマスコミの姿勢について、またこども時代の思い出話、趣味の渓流釣りについてなど多岐にわたり、この本を読んだだけでは、「どうして、この人のスケールは、こんなに違うのか?」は正直あまりわからなかったですが、「麻原さんに恨みはない」など、この人の思考の方法からは、学ぶべきことは多いように思いました。

私は、裁判が始まった当初から関心をもって裁判の進展を見続けていこうと思ってはいたが、麻原被告に対する恨みの気持ちは消えてしまっていた。こんなにもひどい被害を受けたのに、このうえさらに事件の首謀者を恨み続けるような人生の無駄はしたくないと考えているからだ。
人を憎んだり、恨んだりするこごは、かぎりある自分の人生をつまらないものにしてしまう。さらに、その行為はとてもエネルギーがいることだ。それだけのエネルギーを使うのなら、澄子の介護も含め、もっと別なより有意義なものに使いたい。それが私の本音なのである。(p19-20)


なかなか、その「恨み」や「憎しみ」の気持ちから離れられないから、人間、ツライんですけどね〜。

ひとつ、河野さんの思考の原点にありそうなのが、たくさんの「死」を幼少時から見てきたことで「死は自分の隣にある」ので「自分にできることは、人生の一コマである。現実をありのままに受け止めて、では、それをどうするか?と、淡々と対症療法的にその現実に対応する生き方をしてきた。」という点にあるかもしれないです。

それにしても、恐ろしく冷静で知的な人に違いないです。一方で、抜きん出た営業マンだったそうだから、やはりスケールが違うのかなあと思うのみ。それでも、現実をどう対応するか、で世の中の見え方も違ってくるし、その後の生き方も変わるんだと思います。

4476032982命あるかぎり―松本サリン事件を超えて
河野 義行
第三文明社 2008-06

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夕ごはん

さんまの塩焼き
ブロッコリ
冷やしトマト
てんぷらの煮物
納豆
ぬか漬け
なすとあげのみそしる

2 comments:

  1. この本は読みたいですね。
    「ゆるす」ということの、はかりしれない奥深さを教えていただけるような気がします。

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  2. 何もいえません。

    当時の日本でテロなんて考えられず、また、警察、メディアの報道の仕方がひどかった。

    おかげでメディア嫌いに拍車がかかったわけではなく、、、後に読んだ 森達也さんの本で、”メディアリテラシー”を学びました。

    甥っ子の、中学副読本には、”メディアリテラシー”という言葉が載っていました。
    奴が理解しているかどうかは・・・・はなはだ疑問ではありますが。

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