2007-07-11

「メタボラ」


いつまで続く,低温状態。今日も薄ら寒い一日。午前中は、多忙期に備えてギョウザを作って冷凍。テレビではMLBのオールスターをやっていた。試合前のセレモニーでメイヤーさん(?)という史上に残る名選手を讃えるイベントがあった。その演出が意外に洗練されていてびっくり。球場全体に、かつての大選手に対する「リスペクト」があふれていて、派手すぎず、地味すぎず。アメリカでの「野球」の位置がうかがえる。こういうのを見ると、「全米チャンピオン」を決めるシリーズを臆面もなく「ワールド・シリーズ」と言い切ってしまうのも仕方ないかな、と思った(ちょっとだけ)。

ヒバリ兄弟は、、、、、巣からはみでるくらいの大きさ。ほとんど成鳥ですね。正直いって、、、、かわいくなくなってる。。。。明日あたり旅立ちでしょう。

昨日読み終えた本、桐野夏生の最新作「メタボラ」。朝日新聞の連載小説だったそうだ。実は、ずいぶん前に図書館から借りていたんだけど帯の宣伝文が、「破壊されつくした僕たちは、<自分殺し>の旅にでる。」とあって、<自分殺し>を<自分探し>って読み間違っていました。それで、「イマドキ、これはどうだろう?」とちょっと食指が動かなかったのだけど、返却日もとうに過ぎたので読み始めた。

前作「魂萌え!」でがっかりしたのも読み始めなかった原因のひとつ。

で、「メタボラ」。

わたしは、好きです。これはですねー。いろんなテーマが重なり合っているけど、わたしは、「すれ違いの純愛小説」だと思う。世界のまんなかから叫んだりは、絶対しない「純愛」です。

ネタバレにならない程度に内容を紹介すると、ストーリーは、20代と思われる「僕」が漆黒の闇に包まれた森の中をさまようシーンから始まる。「僕」は記憶喪失。過去がない人間。その森の中で、「アキンツ」と出会う。「アキンツ」は、実家のある宮古島を離れたばかり。「僕」は、「アキンツ」から「ギンジ」という名前をもらい、「アキンツ」は「ジェイク」と名乗ることにして、ふたりの「新しい人生」が始まる。(この「なまえ」の獲得の物語って、ゲド戦記を彷彿とさせる。)

舞台は、沖縄。

前半部分は、「僕(ギンジ)」が、他人の捨てたペットボトルに水道水をつめこんだものが唯一の財産というところからはじまり、どうやってサバイブしていくかのRPGのような展開。新しいアイテム(服、タオル、歯ブラシなど)を手にいれ、出会う人々とうっすらとした関係を積み重ね、どうやって「ギンジ」として「再生」していくかのストーリー。そして「アキンツ(ジェイク)」も「僕」と別れて「ジェイク」に変身していく。後半には、「僕」の過去も明らかになり、そしてラストは、哀しみにあふれている。「純愛」だよ。絶対。

今までの桐野作品のような「グロテスクなんだけど妙に爽快感のあるラスト」とはちょっと違う。タイトルの「メタボラ」は「新陳代謝」の意味もあるそうで、桐野夏生も「僕」や「アキンツ」のように日々変わっているんだろう。

その他の登場人物も、「愛、平和、自由、エコ」をうたう「パラダイス・マニア」というコミュニティだかリゾートだかあやしい会を主宰する「イズム」という男(このネーミングに、作者の「毒」が感じられるでしょう?)が現れたり、格安のゲストハウスを経営する元バックパッカーで、選挙に立候補しようとする「ナイチャー(内地人)やら、ホストクラブの店長やら。

どうして、こう「ああ、こういう人たちいそう、いそう!」と思えるのだろう。それは、きっと作者の綿密なリサーチの結果だろう。

「僕」は、はじめから「過去がない(=足場がない)人間」という設定だが、登場する人々は、バックパッカー、フリーター、ニート。足場がなくフワフワと浮遊する若者が中心。派遣労働の過酷な実態もノンフィクションのように緻密に描かれている。(これが、「朝日新聞」の連載っぽいなーって思いました。)彼らの日々は、まさに「新陳代謝」の繰り返し。「僕」も「アキンツ」も一日、一日で全く別人のように出来事に反応している。そうするしか生きる道がないから。

浮遊するしかない若者の上にのっかっているのが、「イズム」のようにペラペラと「言葉」で支配する人々。また、この「言葉」がうすっぺらーい。(ちなみに、昨日の本屋でびっくりしたこと。「イズム」のモデルがいたんですねー。小さい町の本屋にコーナーまでできてた。「高橋歩(アユムですよ!)」若者のカリスマだそうです。「世界放浪のススメ」みたいな本を自分の出版社からいくつも出している。20年前のわたしだったらうっかり崇拝しちゃってたかも。)

それだから読んでいても意味不明な「アキンツ」の強烈な宮古弁が彼になんともいえない魅力を与えている。

哀しい本だけど、もう一回読みたくなってきました。まだまだ話足りないけど、長くなりました。今日はこの辺で。オススメです。「メタボラ」。

夕ごはん

水餃子
海ぶどう
ブロッコリ
糠漬け(ブロッコリの茎、大根、人参、キャベツ)
秋刀魚の梅干し煮
納豆
長いもすりおろし
じゃがいも、ニラ、揚げのみそ汁

なんと!「メタボラ」読み始めた日にもらったのが沖縄名産「海ぶどう」。読了記念ということで本日試食。オツな味。

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